声明等

日本爬虫両生類学会 第42回大会 総会 (2003年10月26日) で,「条例で保護されている希少爬虫両生類の商取引に反対する声明」が提案され,採択された.


条例で保護されている希少爬虫両生類の商取引に反対する声明

クロイワトカゲモドキ・イシカワガエル・イボイモリは奄美諸島と沖縄諸島の固有種で、いずれも環境庁(現、環境省)の最新版レッドリスト・レッドデータブックにおいて絶滅危惧種に位置づけられている。さらに沖縄県産の個体群については、同県によって天然記念物にも指定され、保護を念頭に取扱いが厳しく制限されている。一方、鹿児島県(奄美諸島)の個体群(クロイワトカゲモドキは亜種オビトカゲモドキ)については、長らくその取扱いに対する法的規制がないため、しばしばペットにすることを目的とした乱獲・販売の対象となり、こうした行為が個体群の存続に及ぼす影響が憂慮されてきた。とりわけクロイワトカゲモドキの亜種オビトカゲモドキについては、沖縄県産の複数の亜種と同様、少数の島嶼の限られた場所にしか生息しないことから、その影響はとくに大きいことが懸念されていた。

こうしたなか、最近になって幸いなことに、鹿児島県により新たに同県内のクロイワトカゲモドキ(亜種オビトカゲモドキ)・イシカワガエル・イボイモリが天然記念物に指定された(「鹿児島県文化財保護条例」:平成15年4月22日告示)。この指定によってこれら3種は、そのすべての分布地において法的な保護の対象となったわけで、ペットとしての飼養や商取引を目的とした捕獲は全面的に禁止されたことになる。しかしこのような経緯があるにもかかわらず、現実にはこれら希少野生動物の販売は依然、ペットショップの店頭やインターネット上で続けられており、そのほとんどで条例指定以前に捕獲された個体、飼育下での繁殖個体を対象としているとの言い訳がなされている。しかし仮に現在の商取引の主体がこのような法的規制前の捕獲個体や飼育下での繁殖個体であったとしても、こうした個体と新たな野外での捕獲個体との識別法がない中での販売の野放しは、結果的に野外での違法採集を放任し、これらを保護するための条例の実効性を著しく損ねるであろう。また希少動物保護の精神にもとるのも明らかである。

以上の理由により日本爬虫両棲類学会は、このような絶滅のおそれのある動物の商取引に反対の意を表明し、その禁止を強く呼びかけるものである。

日本爬虫両棲類学会 会長 松井正文

声明の送付先は以下の通り.

環境省環境大臣小池 百合子
環境省自然環境局局長小野寺 浩
環境省自然環境局総務課動物愛護管理室東海林 克彦
環境省自然環境局野生生物課名執 芳博
鹿児島森林管理署署長長友 壽助
文化庁長官河合 隼雄
沖縄奄美地区自然保護事務所所長青山 銀三
鹿児島県知事須賀 龍郎
鹿児島県文化環境部部長仮屋 基美
鹿児島県文化環境部自然保護課課長徳丸 久衛
鹿児島県教育庁文化財課課長吉永 和人
鹿児島県教育庁文化財課指定文化財係係長寺田 仁志