日本産爬虫両生類標準和名リスト 掲載種選定ポリシー

標準和名委員会 2023年6月29日

本学会は日本産の爬虫両生類を対象とした標準和名を選定し,それらをリストに掲載している.新種記載や分類群の分割などにより標準和名の新設や変更が必要となった時に,本学会の標準和名委員会の審議により標準和名案を選定し,その後学会員の審査により標準和名を決定している.

分類学的変更や新種記載における学名の適格性に関しては国際動物命名規約の定めるところであるが,和名に関しては明文化された規則は存在しない.そのため,本学会が発行する標準和名リストへの掲載の是非については,同規約とは別に本学会所属の専門家に意見を問うてそれに従う.したがって,本学会の見解は両生類や爬虫類のデータベースに採用されている分類や学名と必ずしも一致しない場合がある.

論文等で発表された学名に対する和名の扱いについて,専門家に意見を聞き,問題がある場合は標準和名案選定を見送ることがある(疋田, 2023を参照されたい).たとえば,分類群の分割では解析に重要な種が含まれていないなど,さらに研究が必要と考えられる場合がある.また,種内や近縁種間ではミトコンドリアと核遺伝子で,系統関係が一致せず,ミトコンドリアでは異なるのに核遺伝子ではほとんど違い無い(たとえばShimada et al. 2022),あるいはこれらの遺伝マーカー間で地理的な分布に大幅な不一致がある(たとえばTomimori et al. 2023)場合などが知られている.近年,研究の進展によって国内の爬虫両生類でも多くの新種記載が行われているが,以上のような事実に鑑み,標準和名委員会では,客観的かつ科学的な観点から問題があると判断した場合には,標準和名案選定を見送ることがある.拙速な標準和名の選定と公表はのちに混乱を引き起こすとの懸念があるためであり,その疑義を払拭するに足る遺伝的,形態的,または生態的な追加情報が提示された後に標準和名の検討を行う.